士業の中でも、税理士は税に関するプロフェッショナルとして比較的よく知られている存在です。
しかし一方で、資格を得るまでの試験は非常に難関で、何年もかかってやっと取れたのに仕事も苛酷。そして給料も言われるほど良くないなど、散々な言われ方をすることも多くあります。
税理士は本当に割に合わない資格なのでしょうか。
その大変さや年収などについて見ていきましょう。
税理士の平均年収は700万円前後と言われている
厚生労働省の発表した賃金構造基本統計調査によれば、会計事務所に勤務している税理士と公認会計士の平均年収は男性で700万円、女性で450万円程度とされています。
まず男女に大きな差がありますが、これは女性が出産や育児などで仕事に専念することが難しく、パートタイムで働くことを選択することが多いためと言われています。
そうした事情を加味すれば、もしフルタイムで働けたならばどちらも700万円前後になる可能性はあり、日本全体の就労者の平均年収とされる450万円程度よりは多い年収をもらっているということができます。
ただし以下から述べるような税理士の大変さからすれば、少し寂しい数字とは言えるかもしれません。
試験はかなりの難関
税理士試験は国家資格であり、合格率は1科目につき10%と、かなりの狭き門です。
税理士資格を得るには合計5科目合格する必要があり、一般的な税理士で1科目に1年かけて合格し、合計で5年はかかると言われています。
しかもこれはあくまで順調にいった例で、人によっては資格を得るまで10年以上かかるということも珍しくありません。
もちろんその中には、途中で諦めて別の道に進む人もいます。
まず税理士になるという、それだけでかなりの大変さがあるのです。
ミスが許されない仕事
税理士は通常、各企業などと契約して業務を行いますが、顧客からは税金のプロフェッショナルとして頼られる立場であり、もちろんミスは許されません。
複雑な税金の計算をこなせるのは当然で、しかも税制に関する法改正は毎年のように行われているので、常に最新の情報にアップデートし続ける必要があります。
記入漏れや計算ミスは企業にとってそのまま脱税などの問題にもつながりかねないため、日々大きなプレッシャーにのしかかられています。
企業にとっては信頼して税務について任せている相手であり、ミスをしなくて当たり前の存在なのです。
顧客との衝突も多い
税理士は顧客に対して、税に関して客観的な立場でいる必要がありますが、顧客側からすれば少しでも節税をしたいと考えるのが普通です。
そのため節税の相談を持ち掛けられるのは日常茶飯事で、税理士はその相談に対して適法の範囲内で効果の高い提案をする必要があります。
法を脱してはいけないことは前提ですが、我の強い経営者などではそうしたことへの理解が少なく、衝突してしまうこともしばしばあります。
顧客の期待に応えつつ、法律という一線は断固として守らなければならないという孤独さもそこにはあるのです。
競争は年々激しくなっていく
そんな厳しい税理士の仕事ですが、古くは資格さえ得られれば一生食べるのに困らないと言われていた時代もありました。
税務は企業にとって不可欠なものであり、一度安定した顧客を得られれば収入が大きく変わることはないとされていたためです。
しかしそうした環境も、近年では少しずつ変わりつつあります。
その理由の一つが、資格所得の多様化です。
税理士になるには道は一つだけでなく、たとえば試験を受けなくても、税務署で一定の期間を務め上げれば資格を得られるようになっています。
また弁護士や公認会計士でも、税理士会に登録するだけで税理士としての仕事はできてしまうのです。
そうやって様々な方向から税理士が増えていく中で、さらに問題となっているのが業界内での競争の激化です。
税理士資格には定年というものがなく、本人さえ望めばいつまででも税理士として働くことができます。
つまり資格者がどんどん増えていく中で減る人も少なく、しかも近年の景気によって中小企業は減少の傾向にあるため、税理士同士の顧客の奪い合いは激しくなり、その結果として全体的に報酬も少しずつ下がっていると言われています。
人間関係に悩むことも
税理士は日本国内で7万人程度いると言われていますが、一つ一つの世界はごく小規模なものです。
事務所は余程の大手でなければ少人数で回すことが多く、人間関係も閉鎖的になってしまうことが多々あります。
またトップである所長は税理士として自身で開業していることが多く、そのため自分の意向を事務所全体にも強く働かせがちです。
その結果、職場環境や仕事の方向性などは事務所によって差異が大きく、所長との相性が悪ければそれが改善するということもあまり望めません。
税理士は割に合わないことばかりではない。
ここまでかなり税理士の悪い面ばかりを述べてきましたが、もちろん悪いことばかりではありません。
ハードな仕事であるため長く続けられない人が出てくることも事実ですが、良い部分もたくさんあり、そのために楽しく働いている税理士も多くいます。
以下からそうした例も紹介しましょう。
開業した税理士の年収は多い
冒頭で税理士の年収について触れましたが、そのデータにはいくつか、そのままで解釈すると誤解されてしまう部分もあります。
その一つが集計方法で、冒頭にも述べたように厚生労働省の公表しているデータは「会計事務所に勤務している税理士と公認会計士の平均年収」です。
まず、税理士と公認会計士が一緒になっていることに注意が必要です。純粋に税理士のみの年収を集計したデータではないのです。
そして会計事務所に勤務しているという点も重要です。
つまりこの数字に表れているのはあくまで会計事務所に勤務している立場の年収であり、自身で開業し独自に顧客と契約している税理士の年収は含まれていません。
日本税理士連合会によるデータでは、開業した税理士の年収は平均して3000万円以上とされています。
もちろん開業すれば誰でも儲かるということではなく、中には顧客をまったく得られず極端に収入の低い税理士も含まれているので、全員が3000万円以上の収入を得られるということではありません。
それでもデータの中央値をとってみても1000万円程度はあり、上限で言えば年収3000万円を遥かに超える人もいると考えられますから、かなり夢のある話だと言えるのではないでしょうか。
税理士は誇りを持って働いている人も多い
また税理士としての自分に誇りを持って働いている人も多くいます。
たとえば企業の税務に関する管理を任されるということは、企業のパートナーになるということでもあります。
経営者の考えや方向性を聞きながらより良い提案をして、企業の発展につなげていくことはとても誇らしく、やりがいのある仕事と言えるでしょう。
業務内容によっては経営の勉強をすることもでき、学びの多い仕事でもあります。
他にも税理士には企業と法律の間を取り持つ法の番人としての側面もあり、強い正義感が求められる仕事です。
己を律することももちろん、時に顧客の経営の危うさを早期に見抜いて、速やかに是正をしたりアドバイスをするなど、法を守る立場としての誇りを持って臨むことのできる仕事でもあります。
そしてしっかりと仕事をして顧客の信頼を得られれば、また頼りにされて新しい出会いもあります。
きちんとした仕事ぶりが認められ、評価されるというのはどの仕事でも同じ嬉しさがありますよね。
そうして仕事を認められやりがいを感じている税理士にとっては、割に合わないということはないでしょう。
税理士は割に合わない資格か?
税理士は資格を取ることも厳しく仕事も大変であるため、収入も考えると割に合わないと考える人がいるのも不思議ではありません。
ですが一方で、開業をして平均をはるかに超える収入を得る人や、顧客との関係性や税理士としての仕事にやりがいを感じている人も多くいます。
性格や能力によって合う仕事や合わない仕事があるのはどの職業でも同じであり、結局は人によるということは言えるのかもしれません。
試験や仕事の厳しさを避けるか、大きな収入の可能性ややり甲斐を取るかはその人次第。
割に合わないかどうかも、その人次第ということになるのではないでしょうか。

